台北の床屋体験記
台湾に生活の場を置いて3年半を過ぎた。
日々の生活で一番困るのは食事だ。毎日三度三度に油で揚げたり炒めた料理は体質的に拒否反応が起こる。とりわけ昼飯時は蕎麦が喰いたい、うどんが食べたい、ラーメンが食べたいと思うことがたびたびだが、職場の近隣にはその手の店がないのがうんざりする。
ところで髪の毛は1ヵ月に1センチ伸びると云われているが、そのため床屋は1ヵ月に一度の割合で行くものだが、台湾で生活しているとそうもいかない。なので、日本に帰国する際は必ず床屋に足を運ぶ。何も、台湾の床屋でもいいではないかと思うかもしれないが、そこには言葉の壁があり、「これくらいに刈って欲しい」とか「ひげは剃らないで欲しい」とか、こちらの注文を伝えることが出来ないのが、帰国しての床屋行きにつながっているのだ。とはいうものの数ヵ月帰国する機会がないときは、やむなく近所の床屋を訪れる。
職場がある同じビル(写真)で貿易会社社長の劉さん(最近分かったことは自宅も吾がマンションの近くに住んでいた)は、少し日本語が話せるので私にときどき話しかけてくるが、床屋のことを話たら、自宅から歩いて7~8分くらいのところに日本語が分かる床屋を教えてくれた。
その床屋に行くと4-5台の椅子で2人がお客が髪をカットしたり髭を剃っていた。理髪師は全員が女性。店の奥では二人の男性がベットのようなものにうつぶせに寝てマッサージを受けていた。床屋もマッサージをやるんだ?と驚いた。
さて、店に入ると当然中国語で迎えてくれる。こちらは最初から日本語でいくしかなく、「いいですか?」と聞いた。店の人はとまどっていた。どうも日本語を話す人は一人もいなかったらしく、「しまった、騙されたか?」と思ったが“後の祭り”で、「ああ、適当に刈られるのか」とあきらめていたところ、日本語の分かる年配の小父さんを連れてきて通訳してくれた。その小父さんは店の人に云われるとときどき話しかけてきて、「床屋代430元ね」「何か希望があるの」「どれくらい刈るの」「頭には何を付ける」と通訳の仕事をしてくれる。あまり注文を付けてもと思い、「短めに」とだけ注文してあとは任せてしまった。
何と、カットは二台のバリカンを使い分けて借り上げていき、最後だけをハサミで仕上げてしまった。
次にシャンプーになると、なんとなく安物風(失礼)のシャンプーをたっぷりかけて洗ってくれるが、途中から頭皮のマッサージみたいになり、時間をかけてのマッサージはこれは気持ちがよかった。そして洗いだが、椅子の後方にある薄暗い部屋みたいなところに移動させられて、水のようなお湯で洗い流してくれた。その後で例の小父さんが登場して「マッサージしませんか、何分で幾らです」と商売熱心に通訳で勧めてくれる。こんなところでマッサージなんてと「いらない、いらない」と断るのだけどしつこく繰り返してすすめてくる。うんざり!
洗髪後はトニックを付けてマッサージをするのは日本でも同じなのだが、頭、首、肩、背中といつまでもマッサージをする。「エッー?! マッサージ頼んでないけどなあ?」と思いながら抵抗するわけにもいかず成り行きに任せるままとなった。約5分後にそれが済むと、例の小父さんが「頭には何か付ける?」と聞いてくれたので、「何でもいいです」というと、おばさんが「バイタリス」と「ポマード」を持ってきて、どちらにするかと聞いていた。「あのー、ムースないですか」「????」「アア、泡の整髪料です」「????」「ああ、もういいです」。仕方がないので「これ!」っと指さして調髪してもらった。
安いのはいいことだけど、なんかすっきりしない床屋体験だった。
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