根本博陸軍中将の話
昨年春、ひょんなことから『この命、義に捧ぐ』という本に出会った。本のサブタイトルは「台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡」とあり、蒋介石軍が毛沢東軍に追い込まれたとき、彼は、満州から日本人5万人を無事に帰国させることが出来たのは、蒋介石総統のおかげである。その恩に報いるために、自分の命を捧げるのだという覚悟で、敗戦国日本から、密かに台湾に渡り、蒋介石に会い、ごく限られた最高の地位の人だけが、このことを認識した上で、金門島を共産軍から死守する作戦指令をだして成功させた人物である。
今日、BSフジの朝の番組「ザ・ノンフィクション」で『父はなぜ海を渡ったのか』の再放送を見た。 何となく見ていた番組だが、途中から、これが冒頭に掲げた『この命、義に捧ぐ』のドキュメントであることがわかり、強い関心を持って観た。
金門島という場所は、台湾の領土でありながら、中国大陸から僅か2キロという至近の距離の島である。蒋介石の高官達は、この島を捨てて台湾での本土決戦を唱えたそうだが、根本氏はその案を否定し、しかも金門島の住民の死者を最小限にして勝利へと導く作戦を遂行したのだ。中国大陸の目と鼻の先にあるこの島の役割は、今も重要な存在となっている。
この本を読んで、台湾の知り合いに金門島を共産軍から守るのに、日本人が深く関わっていたことを知っているか聞くと、聞いたことがないと否定されてしまった。どう云うわけか、この戦に日本人がきわめて重要な立場で関わっていたことは、台湾では知られていない。秘められたと云うよりも、ごく特定の人しか存在を承知していなかったし、根本氏と共にした日本人は中国人の名前で行動していたので、蒋介石総統が指名する作戦司令官だと思われていたらしい。日本人と言うことを公にしてはなら
ない人事だったので、政府も軍も一切記録を残していなかったのだそうだ。
テレビのドキュメントでは、2009年10月に金門島で馬九英総統も出席して「古寧頭戦没60周記念式典」が行われ、根本氏が台湾に密航することに関わった人物の家族も出席。政府・軍の対応もこれらの家族を賓客扱いとして上席におき、根本中将らが国共内戦において台湾の防衛に貢献した事実を、初めて政府として認め、そのことがテレビでも流された。その数日後、軍の高官が、歴史書に根本博氏が金門島の戦争に深く関わったことを肖像写真入りで記した「記録書」?を報道陣に前で手渡したのだった。
蒋介石という人の評価はいろいろあるが、ソ連軍の満蒙侵攻にあたり、日本人が着の身着のままで満州から引き上げるが、そのとき便宜を図ったことが、時の満州の責任者であった根本中将が「恩」を強く感じ、台湾の危機と蒋介石の苦境を知り、「義」に捧げるという命の叫びと行動は、深い感動を持ったのである。



















